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無理です!!
「あの人超イケメン!!」
「あ、ホント。……声掛けてみようか」
少し離れたところから、女の話し声。
その女の視線が俺と合った。
女は俺と視線が合うと、何故か手を振ってきた。
どうせ俺の名前を聞けば、笑いを堪えながら遠退いていく。
『徳田財閥』の『徳田 新之助』は有名すぎる名前だ。
「新さん、ヤッホー」
「宮城」
俺に話し掛けてきたのは、宮城 源(みやぎ げん)、同級生で俺の童貞をやった男だ。
こいつも『残念』なヤツだ。
「よう、宮城県!!」
「宮城 源だって」
おちゃらけて返せるのは羨ましい。
宮城は童顔で、どう見ても中学三年生くらいにしか見えない容姿をしている。
だから俺は『童顔』というコイツの武器を使った。
「今日ミクちゃんと一緒に校内歩かないの?」
「ミクは今年六年だし。新一年生の入学式で忙しくなるから連れまわせない」
「新さんはホントにミクちゃんだけは大事にしてるよね」
「当たり前だろ。ミクは俺の天使だからな」
俺はミク以外は見えていないし、ミク以外は欲しくない。
「じゃ、あの女の子達に『俺は『徳田 新之助』だ』って言って引かれてきなよ。新さんが脱色して金髪にイメチェンしてるの気付いてないから」
宮城に言われて俺はさっきの女に声を掛けた。
「俺は『◯本の◯男坊、徳田 新之助だ』」
こう言うと、俺を知らないヤツでも引いていく。
有名過ぎて、ある意味『便利』な名前なのかもしれない。
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