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「なんでもよう知っとるねぇ。お父さんは海軍の人なん」
今度はうちが彼女の背中を洗いながら云った。
薫子さんは首を振った。
「うちは商人の娘や。父は貿易関係の会社をやっとう。うちの親類縁者に軍人はおらへんし」
「……ほうじゃったんか」
彼女がうちとそう変わらない環境だと知ってびっくりした。
「うちの中尉とは幼なじみ同士なんやけど、うちは一人娘やさかい、親の猛反対を押し切って、やーっと結納まで漕ぎつけてん」
薫子さんは誇らしげに笑った。
「女学校に行っとうった頃はほんっまに勉強せんかったのになぁ。今は新聞をだいぶ読むようになったわ」
そして、少し寂しそうに笑った。
「……あんたもじきに、そうなるで」
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