第三話

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大胆だが育ちの良さを感じさせる薫子さんとはすっかり打ち解けた。 温泉の湯でつるつるの肌になったうちらは、間宮中尉の部屋へ戻ってきた。 (ふすま)が開いて、神谷中尉が出てきた。 「おっ、ほっぺた桃色に染めて、えらい別嬪(べっぴん)さんになって帰って来たのう」 うちの頬がさらに赤く染まる。 「もう、余計なこと云うてやんと」 薫子さんが彼の腕をぐいっと引っ張る。 「……ほんなら、明日、楽しみにしとうで」 神谷中尉は部屋の方へ振り向いて右手を上げた。 「じゃかぁしいわ。貴様は大儀(たいぎ)ぃんじゃ。 ……じゃぁのう」 部屋の中から間宮中尉の声が聞こえてきた。 神谷中尉は大きな笑い声とともに、薫子さんに腕を引っ張られて自分の部屋へ戻って行った。 ┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈ *じゃかあしい ー うるさい *たいぎい ー 鬱陶(うっとう)しい・面倒くさい
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