第四話

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「そがぁに、はぶてんなや」 間宮中尉が、灰皿に煙草をぎゅっと(ひね)りつけ、立ち上がった。 座っているときはあまり感じないが、立ち上がられると、六尺近くある上背に圧倒される。 だけど、うちは五尺とちょっとしかない背丈で、果敢にきっと睨んで云った。 「うちゃぁ、ちぃーっとも、はぶてとらんけん」 間宮中尉は一瞬、目を見開いたが、すぐに満面の笑みになった。 「よいと、われの顔がきしゃっと拝めたのう」 うちは、また俯いた。 間宮中尉は懐手(ふところで)をして近づいてきた。 「裏の(みぞ)に蛍がようけおるそうじゃけぇ、見に行かんか」 俯いたうちの顔を覗き込んで中尉は云った。 「……うち、慣れん汽車でくたぶれたけん、お先に休みますけぇね」 うちは蚊帳(かや)の入り口を(めく)り上げて、さっさと中に入った。 ┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈ *よいと ー やっと *はぶてる ー(機嫌を損ねて)()ねる *きしゃっと ー ちゃんと *ようけ ー たくさん
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