第一話

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改札口の柵から身を乗り出すようにして、ホームの方を見つめる小太りの中年の女がいた。 うちと目が合うと一瞬、(いぶか)しげな顔をしたが、すぐに笑顔になった。 「お嬢さあーん、こっちじゃけえー」 女は手を振り上げて、大声で叫んだ。 周りの者がうちを見る。 うちは恥ずかしさで頬を赤らめながら、女に駆け寄った。 「……佐伯(さえき) 廣子(ひろこ)です」 そう名前を告げると、 「やぁやぁ、よう()んさったねぇ。朝から中尉殿、首を(なご)うして待っちょるけぇのう」 と云って、うちの手から旅行鞄をひょいと取りあげて歩き出した。
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