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そもそも、間宮中尉は姉の典江の見合い相手だった。
姉はうちと違って、美人である上に、女学校時代にはずっと級長を務めていたほど頭が良いので評判だったから、海軍兵学校卒の士官である間宮中尉との縁談が来たのだと思う。
だけど、姉は隣に下宿している高等師範学校出の中学の先生のことを密かに慕っていた。
そして、先生も姉に思いを寄せていた。
うちはそれを知っていたから、一肌脱いで、二人をくっつけてあげたのだ。
彼らは来年、めでたく祝言を挙げる。
これで、間宮中尉と我が家との縁は切れた、と思った。
そしたら驚いたことに、先方はうちを、と云い出した。
もともと間宮中尉自身は初めから、姉ではなくうちを望んでいた、というではないか。
頼まれて急遽渡した姉の写真は、今年の正月に写したもので、隣にはおまけのようにうちが写っていた。
父も母も、きっと向こうが気を遣ってのことじゃと思い、
「春に女学校を出よったばかりのこがぁな子が軍人さんの奥さんじゃて、任に合うとらんけぇのう」
と云って、やんわりと断ろうとした。
ところが、先方は引き下がらなかった。
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