見つめた自分とその先へ

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「父と――」  どこかの病室で涙する父の隣には、見守るような女性の姿がおぼろげに映りこんでいる。 「……お母さん」  そばのベッドで眠っているのは紛れもなく自分自身だ。  ぼやけてはいるが、見間違いなどではない。そのベッドの側にいるぼやけた女性の影は、母のものだった。 『あなたのそばにいつもいるから』……母はその約束を、ちゃんと果たしてくれていたのだ。ついにこらえきれなくなった瑠衣は顔を伏せて、そっと涙を拭った。 「素晴らしい景品ですね」  瑠衣の背中を支えながら、山田は一鬼に微笑みを向ける。 「それで一鬼さん、これはいつごろの写真なんですか?」 「お。さすが、山田さんは目ざといな」  写真のなにが気になるのか分からず、瑠衣は思わず山田を見上げる。 「いつのものかって……なにか重要なんですか?」 「うつしよとかくりよでは、時間の進み方は違うわけですが……この写真が今のことだとすれば――」  瑠衣の手にある写真を見つめて言葉を止める山田に、一鬼はにいっと口角を吊り上げた。 「山田さんが察した通り、瀬戸田さんは今も、うつしよで生きとる」 「え……!?」  熱かった瑠衣の目頭の熱は、驚きのあまり急速に冷えた。  自分は今、確実にかくりよにいるのに、一鬼は自信満々に『生きている』と告げた。にわかには頭が整理できそうになく、山田に目を向ける。 「僕の予感が合っとうってことなら、うつしよの瑠衣さんは今、病院で昏睡(こんすい)状態なんやろうと思います」 「昏睡、状態……」 「それを瑠衣さんに知らせるために、青助を飛ばしたんですよね? 一鬼さん」
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