943人が本棚に入れています
本棚に追加
海兵時代「江田島で幽閉」されていた鬱憤が、一気に噴出したのはその頃だ。
神谷と一緒に、一通りの「悪さ」はした。
命を懸けた訓練から解放された賜暇には、酒を浴びるほど呑み、俸給をごっそり賭けてうつつを抜かし、芸者を上げてドンチャン騒ぎをした。
女郎屋に入ったら部屋が一つしか空いておらず、仕方がないので間に衝立を置いて、それぞれ妓を抱いたこともある。
贔屓の芸者に子を孕ませかけて、ヒヤッとしたこともあった。
しかし、女には心から溺れることはできなかった。
だから、女たちはいつも短期間で去って行った。
いつか見た、あの強い眼差しが、わしの心のどこかに棲みついて離れないのを、感じ取ったからかもしれない。
最初のコメントを投稿しよう!