第三話

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久しぶりに実家に帰ったときのことだ。 座敷机の上に見合い写真が山のように積み上げられていた。 「……ほう、兄貴の見合い写真か。えらぁ量じゃのう」 兄は廣島県庁に勤めていた。 「なに云うとるんかっ。みなあんたんよっ。 兄やんはこの秋に祝言を挙げるんじゃろうがっ。 ……あんたぁ、いっこも家に帰って()んけぇっ」 母は、怒りを爆発させた。 「えぇか。こがぁに持ってきてもろうて断るんじゃぁ、間に入っとる仲人さんに申し訳もできゃぁせんけぇ、あんたぁ、こん中から決めんさいね」 母は怒るし、久々に家に帰ってきてもすることがないので、とりあえず見てみることにした。 そして見つけたのが、廣子とその姉さんが写る、あの写真だった。 五年も前のことなのに、廣子の写真を一目見たとたん、 ……あんときの、あの女の子じゃ。 と、わかった。 頬はややほっそりし、もう真ん丸な顔ではなかったが、面立(おもだ)ちはさほど変わっていなかった。 なにより、わしを魅きつけた、あの強い眼差(まなざ)しがそっくりそのままだった。
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