第三話

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わしは早速、写真の廣子を指差して、この娘と見合いがしたいと母に云った。 すると、母の顔が見る見るうちに曇った。 見合いの話が来ているのは姉の方だと云う。 写真に妹が写っているのは、急な話で一人きりの写真がなかったためだそうだ。 「(あね)さんを差し置いて、妹と見合いするんは常識はずれじゃ」と、両親と仲人から散々云われた。 揉めに揉めたが、わしはどうしても譲らなかった。 そうこうしているうちに、しばらくたって、姉に縁談が決まったという、わしにとっての「吉報」が届いた。 これで晴れて廣子と見合いができると思っていたら、今度は廣子の親が「春に女学校を出よったばかりのこがぁな子が軍人さんの(おごう)さんじゃて、任に()うとらんけぇのう」と断ってきたと仲人が云う。 母は「姉妹して海軍中尉をなんじゃ思うとるんじゃ」とぷりぷり怒っていたが、 わしは意に返さず「心配せんでも、大尉にならんと正式に届けを出せんけぇ、とりあえず結納だけでも済ませておきゃぁ、そんでえぇけぇのう」と仲人に云ってもらった。 こうして、ようやく見合いに漕ぎつけ、廣子と「再会」したのだった。
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