第四話

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第四話

「……どしたん」 わしの着流しの帯を締め終えた廣子が、わしの顔をまっすぐ見上げて云った。 わしは廣子の頬を両手ですっぽりと包んだ。 見合いのときも、結納のときも、廣子は俯いてばかりで、こんなふうにわしを見てはくれなかった。 迷ったが、廣子をここに呼んだのは正しかった。 今、この手の中に、わしが長い間求めてきた、あの目がある。 わしの心を射抜いた、あの強い眼差(まなざ)しが……
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