第五話

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中食(ちゅうじき)をとった神谷の部屋から戻ると、蒲団が一組敷かれていた。中食の後は午睡をとるため、仲居に用意させていた。 わしは廣子の肩を抱き寄せ、 「……昼前の続きをやるけぇのう」 と、耳元でささやいた。 廣子がびくっとしてわしを見上げる。 「……ほいじゃけぇ、また……だれか、入って来るかも……しれんけぇ……」 涙声になっていた。 神谷のあの「来訪」には、よっぽど気が動転したのだろう。 「奴はさっき、旅館を出たばかりじゃけぇ、しばらくは帰って()んじゃろう。それに、あんとな奴が見ても気にせんでえぇぞ」 廣子の頬をやさしく撫でながら云った。 わしは神谷を心底憎んだ。同じ機でなければ、敵機よりも先に撃ち落としてやるところだ。 「そんとなこと云うても……」 廣子は目を伏せた。 「男が可愛いがっちゃる云うとるんじゃ。 ……つべこべ云うなや」 まだなにか云いたそうな廣子のくちびるを、わしの唇で強引に塞いだ。
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