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「昨日の晩、寝床に入って、さぁこれからっていうときに、うちの婚約者には参ったわ」
わしが麦酒の瓶を傾けると、神谷がコップを手にして云った。
「いきなり、日本はアメリカと戦争すんのか、ときた」
「ほう……」
わしは麦酒を奴のコップに注ぎながら、目を細めて云った。
「屑鉄に続いて、今月からアメリカが油を売らんようになったけぇのう」
先月に南部仏印へ進軍した日本に対する、アメリカの報復措置だった。
「支那との戦は陸軍の仕事じゃが、アメリカが相手じゃと海軍の仕事になる。それが、気がかりなんじゃろな」
それを無言で聞いていた神谷は、コップの中の泡立った琥珀色の麦酒をぐいっと一気に呑み干した。
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