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第八話
〽︎ わ…れは…う…みの…こ、し…らな…み…の……
微睡みの中で、廣子の透き通った美しい歌声が聴こえてきた。
〽︎ さ…わぐ…い…そべ…の、ま…つば…らに……
わしは目を開けた。
「……起きたん」
廣子がふっくらと微笑んだ。
既にきっちりと服を身につけ、わしが眠っている蒲団のそばに座って、すっかり乾いた洗濯物の中の軍足を繕っていた。
踵の部分の補強がない軍足は穴が開きやすいため、薄くなった生地のところに当て布をしていた。
「義彦さんが無事にお務めを果たせますように、ってお祈りしもって繕っとるんよ。
……うちが知っとる海の歌、歌いもって」
いじらしいその姿にぐっときたわしは、身を起こして、廣子を引き寄せようとした。
「うち、針持っとるけぇ、危なぁんよ……」
廣子は慌てて針と軍足を脇へ置き、それから、裸のままのわしのために下着を持って来ようとした。
わしはそれを制して、廣子を抱きしめた。
そして、そのぷっくりしたくちびるを奪った。
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