第八話

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それから、廣子が望んだ旅館の裏の(みぞ)に蛍を見に行った。 夜闇に包まれた溝沿いに並んで植えられた新緑の桜の木々の下、生い茂った草むらの至るところで仄かな光が瞬いていた。 「……きれぇ……じゃね…ぇ……」 廣子は目を細め、うっとりしてつぶやいた。 蛍は、雄と雌が互いを誘い合うために光を放っていると云う。 ここには一体、どれだけ多くの蛍が相手を探していることだろう。 果たして、こいつらは自分に合う「伴侶」を見つけ出し、誘い出せるのだろうか。 わしは、蛍の光をまっすぐに見つめる廣子の横顔を見た。 そこには、初めて見たときの「あの」目があった。
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