第一話

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わしが神谷のコップに麦酒(ビール)を注ごうとしたら、もう瓶は空になっていたので、今度は一升瓶の栓を開けた。 とくとくとく…と奴に酒を注いでやっていると、 「あぁーあ、せっかくの休暇やっていうのに、なんでこんな仕事の話しとうんやろ……そうやっ」 突然、打って変わって明るい声になった。 「夕べは彼女になにしようったんや」 神谷はニヤニヤしだした。 「えらい騒がしなったから、薫子が、なにか彼女に遭ったんやないか、って乗り込もうとしたんやで。おれは、無粋なことすんな、って云うて必死で止めたんや。感謝せえよ」 わしは奴の言葉を無視した。 そのとき、(ふすま)がすーっと開き、廣子たちが風呂から戻ってきた。
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