929人が本棚に入れています
本棚に追加
/47ページ
第二話
「あぁーっ、もう自分らだけで食べとうっ」
廣子と一緒に部屋に入ってきた、神谷の婚約者の薫子が叫んだ。
二人とも白いブラウスにスカート姿だった。
「まだ飯には手ぇつけとらへんわ。大体、おまえらが長風呂過ぎるからや」
神谷が不平を云った。
「長風呂って……あたしら、お風呂場であんたらの汚れ物を洗濯しようってんよ。よう云うわ」
薫子はぷんぷん怒り出した。
廣子は、おれがその辺に適当に置いた風呂の道具を見つけて拾い上げ、洗濯物の籠と自分の風呂道具と一緒に、部屋の隅に寄せていた。
それを終えると、廣子はおれの隣に腰を下ろしながら、薫子に向かって、
「そんとな顔しょうると、せっかくの料理がまずうなるけぇ。早う、座りんさいな」
と微笑みながら促した。
薫子も渋々それに従って、神谷の隣に腰を下ろした。
「さすが、間宮が選んだ女だけあるわぁ。
人間ができとう……だれかとは大違いや」
神谷がおれを見て、しみじみ云った。
「だれがやってえっ」
薫子の目がまた釣り上がった。
最初のコメントを投稿しよう!