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止まった時間の中。 僕は魔人と向き合っていた。 失礼。むこうはこっちを凝視しているが、僕はなるべく目を逸らしている。 そんな感じで対峙していたのだけれど……。 「ええと、……つまり、僕が空き缶をはたいたから、オマエが出てきたのか?」 「そういうことだ。おとぎ話でもランプを擦ることで魔人が出てくるだろう。それと同じ理屈と思え」 「……思えねぇよ……」 「何でッ?」 「だって変態じゃんかよッ」 「……もう変態認めるから、魔人も認めてよ……」 魔人は少し泣いていた。 まあ、確かに問題はそこじゃない。 どうしてコーヒーの空き缶なんてザ・大量生産のものから、どうして魔人なんてUMA以上のレアモノが登場するのか? 「魔人なのはわかった。でもランプの魔人なんだろ。それがなんで空き缶? ぜんぜんランプじゃなかったじゃん」 僕は疑問を口にする。 魔人が悲しそうな顔になった。 「前の御主人が、ワケあって私の憑いていたランプをゴミに出してしまったのだ。……前の御主人はできた人間だったので、ちゃんと金属ゴミに分別して捨てた……」 魔人は言う。 僕は察した。 「……リサイクルされたんだな……」 魔人は泣きながら頷いて、 「……いろいろと大変だったのだ……」 と、崩れた。
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