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「気を取り直して本題だ。オマエは私を呼びだした。さぁ、願いを言え。どんな願いでも3つまでなら叶えてやろう」 おとぎ話よろしく、魔人は言った。 信じていいものだろうか。 けれど、この時間が止まった世界が魔人の言葉を裏付けている。 魔人は本物だ。 その登場もおとぎ話の通りだ。 ならば、3つの願いも……。 自信満々にほくそえむ魔人を前に、僕は考えた。 こういうとき、物語なら……。 「んじゃ、3つの願いを100ぐらいまで増やしてもらおうかとか、そういうのは?」 いちおう訊いてみる。 まあ、ベタですね。 でもいちおう……。 すると、 「よかろう」 魔人は堂々と告げた。 「予想外だッ。いいのッ?」 「もちろんだ。ただし、3つ以上の願いには一つにつき一万円の手数料が……」 「あ、やっぱ3つで良いや」 「またのおこしをお待ち申し上げますッッ」 やはり美味い話には裏があるのだなと、思い知った。 まあ、この場所にいる限り、正直なところ僕の願いなど一つしかないのだけれど……。
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