第七話

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わたしは彼を伯父の本棚へ案内した。 「典江姉さんの旦那さんのことを、ご存知なの」 早速、何冊かの本を抜き出して、パラパラ(めく)っている彼に(たず)ねた。 「ああ、一中で習ったんだ。若くて熱心で、いい先生だったよ。そのときはまさか、親戚になるとは思わなかったけど」 そして、一瞬、遠い目をして、 「(いくさ)に征きたくなければ理科系へ進め、って云われてね。一応、そのとおりにしたけど。 ……結局、征く羽目になったな」 と云って、自嘲気味に笑った。 「お兄さんは海軍兵学校に進まれて、海軍士官になられたのでしょう。あなたは軍人になろうとは思わなかったの」 わたしはさらに訊ねた。 「長兄も、僕も、軍人なんてまっぴらだった。 次兄だけが、どういうわけか子どもの頃から憧れててね」 彼は捲っていた本を閉じた。 「物怖じしない性格で押しが強いんだけど、なんだか憎めないところがあって、確かに軍人向きの人だったな。子どもの時分から妙に堂々としてて、将来大物になるって周りから云われてたし、両親は一番期待していたと思うよ」 亡き次兄のことを語る彼の表情は、しみじみとしていた。 「でも、兵学校に入ってからは、ほとんど家に寄りつかなくなってね。おふくろは親父のいないとこで、なんであんな学校へやったんだろうってぼやいていた」
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