第七話

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「……工専を卒業したら、旦那さんに先立たれた廣ちゃんと、結婚するはずだったんでしょう」 わたしは、静かに訊いた。 彼は驚いた目でわたしを見た。 それから、目を本棚の方に戻して、 「……そうだよ」 と、同じように静かに答えた。 「廣子さんを初めて見たとき、彦兄が惚れた気持ちがよくわかった。僕も、同じ気持ちになったからね。だから、彼女から離れるために東京の学校へ進学した」 彼は目を(つぶ)った。 「彦兄には悪いけど、代わりに今度は自分が彼女を引き受けることになったときは、正直、うれしかったよ」 彼は目を開けて、うっすらと微笑んだ。 「……でも、廣子さんにはそんな気はなかった。 彼女は、一生、彦兄の妻であることを選んだんだ」 寂しげな微笑みだった。
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