第一話

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第一話

真夏の強い日差しを避けるために、北向きの仏間で、わたしはのめるようにして本を読んでいた。 こんなふうに本を読むようになったのは、生まれ育った東京から、父の兄である伯父一家が住む、この地へ疎開してきてからである。 女学校へ通っていた頃は、級友たちが「吉屋信子のお話もいいんだけれど、中原淳一の絵が素敵なのよ」と云って回し読みしていた「少女の友」ですら、見向きもしなかった。 そんな自分が今、伯父の本棚から勝手に引っ張り出してきてまで読んでいるなんて、だれが信じよう。
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