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崇が似合うと言ってくれたワンピースを着て、メイクもバッチリした。
不倫相手なんかに負けるわけにはいかなかった。
喫茶店に着くと、崇と不倫相手はもう来ていた。
まるで、恋人同士みたいに並んで座っていた。
それでも私はその時はまだ、別れさせることが出来ると、崇は戻ってくるのだと信じていた。
「遅れてごめんなさい」
「いや、俺達が早く来すぎただけだから」
不倫相手は崇の同僚。
一緒に会社を出て、一緒に来たのだろう。
胸の内がフツフツと煮えたぎりそうになるのを抑えて、
興信所に集めてもらった不倫の証拠写真をテーブルに置いた。
二人で腕を組んでラブホテルへ入っていく写真が何枚もある。
「何か、言い訳はある?」
「……いや、不倫していたことは事実だ。」
崇はあっさりと認めた。
「この女とは、別れてくれるのよね?」
崇に言って、次に不倫相手を見る。
「あなたには、相応の慰謝料を払ってもらいます」
この時、私はまだ崇を信じていた。
やり直せるのだと、私が許せば終わるのだと。
でも、崇は私から少し視線を外して言った。
「彼女と別れるつもりはない。咲が悪いんじゃない。咲には問題はなかった。
ただ、俺達は愛し合ってる」
「ふざけないでよ!」
店内に私の声が響いた。
他にお客さんがいなくてよかったと、頭のどこかで冷静に考えていた。
崇はスーツの胸ポケットから厚みのある封筒を出した。
「とりあえず300万ある。マンションは売るなり貸すなり咲の好きなようにしていい」
そんなこと、そんなこと求めてるんじゃない。
私はプライドをかなぐり捨てて崇に縋った。
「3年よ?3年も一緒に暮らしてきたじゃない。ずっと一緒にいようねって……」
「すまない」
不倫相手が泣きだした。
なんでアンタが泣くのよ。
泣きたいのは私の方なのに。
気がつけば、私は不倫相手の頭から水をぶち撒けていた。
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