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「Spacetime does not move」
世紀の実験、と言うにはもはやかび臭く耐用年数の過ぎた表現だ。
確かにこれから私が実現させるテスト自体は、昔から想像上では人類の頭の中で描いていた事案だ。それこそＳＦの世界では手垢の付いた素材。誰もがその見識を享受している、言わばテンプレートとしての思考。
そう、『時間を静止』させるなど、愚昧な民衆ですら容易に想像できる。
だが、その発想をいまだかつて現実に行なった者はいるであろうか？
少なくとも私の耳にはそのような話は聞かない。だからこそ、その机上の空論止まりの物理学的アポリアである、『静止時間』を私は可能にする理論を構築させ、今からその証明をするために、世紀の実験、と古き悪しき描写の語を援用し実験するのである。
何故に、世紀の実験、という言葉を忌み嫌うのかというと、時間を止める事は世紀の実験ではなく、世界の支配と同義になるからだ。世紀の実験などといった言葉ではスケール・ダウンしすぎで、私の渾身の試みには相応しない。この実験こそが「世紀」ではなく「世界」の支配であり、世紀など時代の一部分として区分けしないでほしい。
いや、それを言うなら世界制覇という語すら妥当ではないかも知れない。
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