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第二章 未確認
『はあはあ・・・』
私、青山千尋は乱れた呼吸を整えながらターゲットを迎え撃つ為に、草むらの茂みに隠れていた。
深い森の木々が私を見下ろすように取り囲んでいる。まだ、お昼だというのにも関わらず、辺りは夜のように薄暗く、深い霧が立ち込めていた。
『・・・来た』
『青山、ターゲットの位置は?』
『ターゲットとの距離まで五十メートル。いつでも行けるわ』
『了解。捕獲スタンガンの用意は?』
『ターゲットにロックオンした。いつでも大丈夫よ』
目の前には、私の用意した肉の塊の餌にターゲットがかぶりついている。
『3カウント。三、二、一・・・』
私は同時にターゲットに向かってスタンガンを発射した。普通のスタンガンより強い電気を放つそれは、空中を放電しターゲットに命中した。
『ギャンッ!』
ターゲットはスタンガンの電気が当たると、地面を転がり、そのまま動かなくなった。
『命中したわ。ターゲット行動不能』
『よし、生死を確認しろ。死んでしまっては商品にならないからな』
『了解』
私はスタンガンをターゲットに向けながら、草むらからゆっくりと這い出た。
一万ボルトの電流を放つこのスタンガンがよっぽど効いたのか、横に倒れたまま全く動かない。
ターゲットの首元に手を当てた。少し弱いが、脈が動いている。どうやら、死んではいないらしい。
『ターゲット名、人面犬の生死を確認。弱ってはいるけど、死んではいないわ。これから拘束する』
『了解。素早く静かにやれよ。人面犬は時速百キロで走る。起きたら、もう捕獲出来ないと思え』
『了解。ここに来る前に何度も聞いたから分かってるわ』
私は特殊ワイヤーのロープをポケットから取り出し、人面犬にそっと巻き付ける。このロープは特殊な金属を加工して作られている。ドラゴンの炎でも焼けない作りだ。
巻いている途中で起きるかと思ったが、起きる気配はなかった。ロープで縛り、吊るすようにして楽に持てた。
『任務完了。これから帰還するわ』
『了解。俺の所まで、戻ってこれるな?』
『ええ。楽勝よ』
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