第二章 未確認

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『ねぇ、何故私に声をかけたの?一緒に仕事をしようって』 私は何度もこの質問を林檎に投げ掛けていた。何年も。しかし、その度に会社の命令だったとしか言わない。 『何故かだって?何回、その質問をするんだ?その答えはお前が一番よく分かってるんじゃないのか?』 『違う。私が言いたいのは・・・』 『それよりも、明日から別の町の学校に転校してもらう』 『え・・・』 林檎の予想外の言葉に私は言葉を失った。 『転校って・・・、ずいぶん急な話なのね』 『ああ、社長の指示だ』 『一体、どういう事?いくらなんでも勝手すぎるわ』 急すぎる。私は思わず文句をこぼした。私には私の生活があるし、転校なんてしたくない。急にそんな事を言われても困る。 『・・・ドラゴンが現れた』 『なんですって?』 『今の場所から五十キロ離れた村に数日前、ドラゴンが現れたらしい。赤いドラゴンだ。』 『冗談でしょ?』 私はすかさず、そう言った。あまりにもあり得ない話だから。 『俺が、冗談が苦手なの知っているだろう?』 『林檎だって知ってるでしょう?ドラゴンはもういない。みんな滅びたんだから』 『ああ。でもそういう仕事が本当に来たんだ』 『・・・捕獲なの?』 『いや、今回は討伐だ。ドラゴンの心臓を欲しがっている客がいるらしい』 林檎が真剣なのはよく分かっている。しかし、どうしても私には信じられなかった。 ドラゴンは絶滅した。私は今の社長に拾われる前に本当の両親からそう聞かされていた。原因は大昔の人間が沢山のドラゴンを討伐していった為だとか。 『今回は大仕事だ。明日から町の中に侵入し、数日かけて溶け込み、情報収集。ドラゴンが現れたら討伐してもらう』 『・・・』 ドラゴンが生きてる。そう聞いたとき、私の心の中で複雑な感情が沸き上がってきた。モヤモヤさした、ドス黒い感情が。 『お前が何を考えているかは、大体分かる。仕事に私情を挟むな』 そう言われた瞬間、数年前の事を思いだし、そして消えていった。林檎の冷静な口調で諭すような話し方に少しイラッときたが、私は唇を噛みしめ怒りをグッと堪えた。 『・・・分かってるわ』 『それならいい。あと、町には香住と一緒に潜入してもらう』 『・・・はあ。またなのね』 私の口から思わずため息がこぼれた。話を聞いて、私のテンションは一気にゼロまで下がった。 『何だ?嫌なのか?』 『嫌じゃないけど・・・』 嫌じゃない。嫌じゃないが香住は言ってしまえば、私のお目付け役だ。付きまとわれるのかと思うと、これからの生活が嫌になりそうだ。 『そうか。では会社に寄った後、新居に案内する。いいな?』 林檎は冷静な口調で私を見つめた。その目からは逆らうなと言われた気がした。 『・・・了解』 どうせ、逆らっても良いことがない。とうとう諦めた私は、口からそう溢すのが精一杯だった。
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