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翌朝、僕はカーテンから漏れる光とうるさい目覚ましの音で目を覚ました。
『・・・ダルい』
目覚ましは朝の7時を指していた。行きたくないが、学校に行く時間だ。
二度寝しようかな。頭の中にそんな言葉が浮かんできた僕は、重たい目を何とか開けながら目覚ましを止めようと、ベッドから手を伸ばした。
『やあ、おはよう』
目覚ましを止めようとした瞬間、布団の隙間から別の手が伸びたのが見えた。布団をめくり目を開けると、そこには施設の職員の一人、黄郷友里がニコニコと人良さそうな顔がそこにはあった。
『・・・おはようございます。ていうか、何で居るんですか?』
『園長に頼まれたんだよ。どうせ、二度寝するだろうから起こしに行ってくれって。当たりかな?』
『・・・』
正解すぎて僕は返す言葉がなかった。ニコニコとした顔を向けてはいるが、その表情からは「早く起きろ」という感情が伝わってくるような気がした。
黄郷友里。彼は睡蓮園長と同じようにこの施設の卒業生で、この施設の職員の一人だ。睡蓮園長とは一番つきあいが長く、お互いに信頼している戦友のような存在らしい。
『また、夜更かししたのか?』
『・・・少し』
最近、寝る前によく本を読んでいる。今、僕の中で夢中になっている本だ。タイトルは「世界の未確認生物」という本。そのせいで、最近寝るのが遅くなっていた。
『早く着替えなよ。みんな待ってるぞ』
黄郷先生はそう言いながら棚から出したシャツを投げつける。僕はだらだらと時間かけながら袖を通す。
『早く、早く』
黄郷先生が急かすには理由がある。この施設では食事はみんな揃って食べるというルールがあるからだ。これを破ると、睡蓮園長がうるさい。
『よし、今日も良い感じだ』
黄郷先生は僕の服装を誉めると、自分の拳を前に出す。少し照れ臭かったが、僕もそれに合わせて拳を重ねた。
黄郷先生は何故か、いつも僕を優しく接してくれて、平等に扱ってくれる。そこそこ嫌いじゃない。
着替え終わると、僕は先生に背中を押されながら、強引に部屋を出される。
部屋を出ると、すぐそこには皆が集まるリビング。すでに、全員がテーブルについていた。僕の方を一斉に睨みながら。
『ちょっと遅いんじゃないの?』
『・・・』
早速、園長が僕に嫌みな言葉を投げかける。
『まあまあ。早く食べましょうよ』
黄郷先生が庇ってくれたが、園長は納得いかないようだ。
『黄郷先生!あまり、甘やかしてもらうと困ります!赤志君も、もう少し早く起きなさい』
『はい、はい』
僕は適当に返事をしながら、目の前の食事にかぶりついた。他の皆もそれぞれ食べ始める。ちなみに、今日のメニューは焼きたてのパンとベーコンエッグのようだ。
『それから食べながら聞いて欲しいんだけど、最近事件があって、この辺りも物騒になっているから気をつけること。あと、知らない人には絶対についていかないで、真っ直ぐ早く帰ってくること。分かった?』
ちゃんと聞いているのか、よく分からない返事をそれぞれ返す。すぐ誘拐されそうだなと、僕は心の隅で思った。
『ちゃんと分かったのかな?赤志龍見くん?』
園長はそう言いながら、僕の顔を覗き込む。
『・・・はい。分かってます』
僕はなんだかモヤモヤした。あんな言い方しなくてもいいと思う。
近頃、僕の住んでいるこの東村で行方不明事件が多発している。聞いた話では、僕と同じ年位の少年少女がいなくなっているらしい。
僕の住んでいるこの辺りは東村と西村、二つの村を合わせて「花勝村」という名前だ。二つ合わせても人口千人にも満たない小さい村だから居なくなる方が難しいと思う。どうせ、都会の方に出かけて遊んでるに違いない。
『十分に注意して・・・』
『行ってきます』
僕はなんだか聞いているのが馬鹿馬鹿しくなり園長にそれだけ言うとその場に立ち上がる。
『まだ話はおわってないわよ?』
『もう、いいよ』
僕はそれだけ言うと、施設を出た。園長はまだ何かを言いたそうだったが、無視した。
行方不明なんて僕には関係ないだろう。親もいないし、金も持っていないし。僕には何もないから誘拐したって意味がない。
だが、もし行方不明事件と関係してそうな場所を示すとしたら、僕の目の前に広がるこの森が怪しいだろう。
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