第一章 不公平な現実

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夢を見ていた。「ひまわり」で過ごしている夢だ。ベッドで横になっていると、突然僕が大きな怪物に変身して、施設の皆を食い殺して回る夢。 僕自信は助けて欲しいのに皆が僕から逃げていき、やがて味方は誰もいなくなってしまう。 あまりの悲しさに僕は、天に向かって遠吠えする。そこで、僕は自分のベッドから飛び起きるように目が覚めた。 『はぁ・・はぁ・・はぁ』 息が苦しい。僕はゆっくりと呼吸を整えた。 全身、汗びっしょりでシーツまでもがぐっしょりと濡れていた。どうやら悪い夢を見ていたみたいだ。 時計を見ると、夜の八時になっていた。 あの後、園長と別れてからすぐ部屋で寝たのだが、僕はすぐおかしい事に気づいた。施設の中なのに静かすぎる。 僕は部屋を出て、いつものリビングに行ってみた。 しかし、リビングには誰もいなかった。いつもなら、とっくに食事の時間で皆でうるさくご飯を食べて、先生達が忙しそうに走り回っている時間のはずだ。 『誰かいないの?』 僕は周囲に聞こえるように叫んでみた。しかし、誰からも返事は聞こえてこなかった。 何かが起こっている。そう、思った瞬間にさっきの園長の話を思い出した。もしかして、全員で結城を探しにいったんだろうか? 僕はこの時、五歳の結城の事よりも睡蓮園長の方が気になっていた。何故かは分からない。でも、睡蓮園長の事を考えると胸が締め付けられそうになった。 探しに行かないと。僕は無性にそうしたいと思った。でも、どこに行けばいい? 少し悩んだが、僕は一つの手段を使う事にした。 僕は施設の外に出ると、辺りの匂いを嗅いだ。外は街灯一つない為、辺りは真っ暗。しかし、僕には匂いの主と場所がはっきりと分かった。 僕は匂いのする場所に全速力で走り出した。
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