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「んっ!?なんだ!」
自分の足音しか聞こえていなかったビルの中に、一発の銃声が通りすぎた。
「外からかっ!」
窓らしき場所から入ってきたその音。
明らかに外からの一発であった。
俺は急いで入り口へと走った。
崩れかけの階段は恐怖なんて感じる暇なく夢中で走った。
2発目は───。
もし戦闘になっているならば2発目が来る可能性が高い。
その時を待ちながら全力で来た道を戻った。
そして……、
「しおりっ!」
入り口へと戻ってくる。
「はぁ……、はぁ……。しおり?しおりっ!」
そこには影人の姿も、しおりの姿すらなかった。
あったのは、
「これは……しおりの」
SIG P220と包丁が地面に置かれていた。
落ちていたというより置いたという方がふさわしいほどにそれぞれの距離が近かった。
「しおり!」
叫ぶが返事が帰ってくる気配はない。帰ってくるのはビルに反射した自分の声ばかり。
さらに、戦闘ができない俺が今大声で叫び続ければ影人が集まってくる可能性が高い。
「どこ行ったんだ………。まさか……そんなはずは……」
影人にやられてしまったという事が頭に浮かぶが、それにしては武器の置き方がおかしかった。
「………くっ!」
俺は発煙筒を使った……。
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