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「魂……か………」
「賭けてみる価値はあ………っ!?」
それはいきなりだった。
床が、家が、地面が……………世界が揺れていた。
「なっ……なんだこれは!?」
突然現れた地震は止まることを知らなかった。
一度、床にヒビが入るとそれは大きくそして長く広がり、天井からは煙とともにコンクリートの破片が落ちて来た。
「まずいっ!二人とも窓でもいい。早く外に出るんだ。崩れるぞっ」
神林さんが指示をする。
机の下……なんて天井が崩落しては耐えきれない。その他に身を守れるようなスペースはない。
ここは危険を犯してでも外へ行くことを神林さんは咄嗟に指示した。
「…………っ!」
大きく揺れる家の中を走ることは中々に難しい。
しかし、立ち止まっていては下敷きにされるだけ。
「うぉぉぉぉっ!!」
「…………っぐっ!」
俺と歩夢は必死に窓に走り、割れた窓から外へ思いっきり飛び出した。
「いっ…………てぇ………」
「か……河意。大丈夫か?」
「あ……あぁ」
地震はそれでも止まることはなかった。
揺れる地面の中、なんとか立とうとするがバランスが取れない。
「それより歩夢。か……神林さんは!?」
「ま………まさかっ!」
俺達が揺れる拠点の方を見ると大きな音と共に拠点は瓦礫の山へと姿を変えてしまった。
「神林さんっっ!!」
「………………けっ!」
大声で瓦礫に向かって叫ぶと、微かに声が聞こえた。
「いけっ!……………行くんだ二人とも」
「そんなことできるわけないじゃないですか!」
「私のことは心配するな!必ず、現実世界で会おうっ!」
声だけしか聞こえなかった。大きな瓦礫の山の向こう側からなのか、中からの声だったのかは定かではない。
「………いこう………」
「河意………お前」
「神林さんっ!現実世界で待ってますっ!」
「待ってますっ!」
神林さんから返事が返ってくることはなかった。
「…………っ………」
「いくぞ……河意………現実世界へ!!」
「あたり………まえだっ!」
大きな音で地面が割れる。
建物が瓦礫となって行く。
そんな状況でなんとか立ち上がった俺たちの目前に、
「あっ……」
火の玉が2つ、姿を現した。
「歩夢っ!!……………それに手を伸ばせぇぇぇぇーーー」
「おーーうっ!」
火の玉に触れた途端───。
目の前に広がる世界は真っ白に染まったのだった──。
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