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暖かい夕陽が背中を焦がして、白坂の優しく大きな背中に全てを任せていると、いつの間にか寝てしまっていた。
「おい、起きろ~」
「ん?」
「着いたぞ」
「えっ!?……あ……ありがとう」
うろ覚えではあったがなんとか由梨の家にたどり着くことができた白坂。
ゆっくりと屈んで由梨を下ろす。
「大丈夫か?」
「大丈夫、だいぶ痛みは引いたよ」
「そうか、じゃあ気をつけてな。また明日」
「待ってっ!」
相当恥ずかしかったのか、由梨以上と言っていいほどに真っ赤に染めた顔。
あえて見せないようにしながら、すぐ帰ろうとする白坂の右手を透かさず掴む由梨。
「どうした?んっ…………」
驚いて白坂が振り向いた瞬間、掴んだ白坂の右手を引き寄せながら彼の両手を掴む。
痛みを忘れてやや背伸びをする由梨。
そして優しく目を閉じて軽く唇を合わせる。
「ありがとう。大好き」
深く絡ませた後に静かに離して白坂の目をまっすぐ見つめて微笑む。
「…………」
何が起こったかわからず、時を刻む時計の秒針がいつもの3倍に感じるほどでその場に固まってしまう白坂。
「じゃあ、また明日ね」
「ま……また明日な」
汗をかくほどに熱を持った白坂は、夕陽焼け染まる街へと消えていったのだった──。
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