1.魂の決戦

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1.魂の決戦

「好きでしたっ!付き合ってください!!」 風に乗る花びらの雨と眩しく差し込む日差し。 地面が桜に染まる出会いと別れの季節、『春』の真っ只中に彼は全身全霊魂の叫びをぶつけていた。 白坂河意。 何を隠そうこの物語の主人公になる人物である。 「はっはい、こっ……こちらこそ……よろしく……お願いします!」 彼の強い決心からなるその揺るぎない気迫に心を撃たれたのか、今にも燃えそうな真っ赤な顔で答える彼女。 梶谷由梨。 この物語のヒロインである事はもちろんだが、主人公より目立っているのではないかというほどにこの先物語を引っ張っていくこととなる存在でもある。 高校2年で階段を上がる。 彼と彼女は中学時代からの友達であり、今この瞬間からは彼氏彼女という発展を遂げたばかりの関係だ。 「…………」 「…………」 当たって砕け散っても本望。 そう心に決めて挑んだ一斉一代の決戦での、見事勝利という結果を受け入れられていない白坂。 初めて挑まれた告白という名の友達からの奇襲攻撃。 動揺と恥ずかしさ、さらに嬉しさが重なり心臓の鼓動が体全体を震わせる感覚を制御できない由梨。 多くの『初めて』が押し寄せてしまい、二人の間には時が止まって感じるほどの沈黙が続いた。 「…………!?」     
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