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「修学旅行クッソつまんなかった」
そう言うのは名古屋の俺の家に遊びに来ていたはとこだった。はとこと言う遠縁の関係ではあるが実の弟のように接している。年齢差は実に20、下手をすれば若い親子ほどの年の差だ。
はとこがそう言うのも理由があった。はとこの学校の修学旅行の行き先が日光だったからだ。別に日光がつまらないと言う訳では無いがその時ばかりは運が悪いとしか言いようが無かった。目玉とされる日光東照宮が平成の大修理で殆ど修理のシートや足場に包まれて見られたものでは無かったのだ。
「逆に考えればこの修理中の方がレアだったんじゃないのか?」
俺ははとこを慰めた。だが、はとこの機嫌は直らなかった。
「他に行ったの滝ばっかりだもん。歴史的建造物が好きなのに肝心の日光東照宮が修理中じゃあ楽しみが無いじゃん」
はとこは関東の子だ。関東の小学生の修学旅行の行き先は日光なのかとカルチャーショックを受けた。日光の修学旅行とは日光東照宮を除いたら滝しか無いのだろうか。後は足尾銅山…… 子供が楽しめるのだろうか。
「俺の時は京都・奈良だったなぁ」
「いいなあ」
はとこは心底羨ましそうな顔をした。放っといても中学か高校の修学旅行で行くだろうし気にしなくても良いんじゃないかな。その時、はとこの母親、つまり俺の従兄妹が話に割り込んだ。
「中学は多分、北海道になると思うよ。あたしの中学北海道と九州のローテだったのよ」
仕方ねぇな。修学旅行で京都・奈良をチョイスする高校に入れよ。俺は、はとこの肩をぽんぽんと叩いて慰めた。その顔は不満タラタラであった。仕方が無いので従兄妹に京都旅行に行くのを進めてみた。すぐにはとこが割り込む。
「これじゃあ家族旅行じゃん、修学旅行として行きたいの」
この我儘坊主め。親の目を逃れて好き勝手にやりたいって事か。
「じゃあアンタ連れてって上げなさいよ」
こう言ったのは俺の嫁だった。
「おいおい、俺が連れてったら未成年者略取に間違われるぞ」
「親子二人旅だと言えばいいじゃない。一応はとこなんだからうっすいうっすいながらも同じ血が流れてるんだから問題無いでしょ」
この理論はおかしいと思ったがこうして男二人での京都への修学旅行に行くことになった。
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