金閣寺 浮いて見えるの 無理無いか

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金閣寺 浮いて見えるの 無理無いか

 二条城よりバスで20分弱、金閣寺に着いた。まず、入場券を買って驚いた。御札なのだ。俺前に来たとき貰ってないよ。修学旅行の集団客には貰えないのだろうか。ちなみに大人は「開運招福」「家内安全」子供は「学業成就」「交通安全」とご利益が違う。俺はこの霊験あらたかそうな御札が貰えて少し嬉しく感じていた。家のどこに飾ろうかなと心が若き踊るのだった。 「ママに上げるから後で頂戴」 いきなりご利益の横取り来たよ。 「うち、パパいないんだ…… パパが別の女の人好きになって出てっちゃったんだ。だからママに渡してあげたいんだ」 うちの一族におけるタブーであった。はとこの父親は彼が物心つく前に出て行った。相手からすれば従兄妹は遊びのつもりだったらしい。そして、授かってしまったせいで結婚。そんな結婚生活が長続きする訳も無く離婚。聞くところによると父親らしい事は何もせずに出て行ったらしい。慰謝料も「こちらも生活がある」と言う理由で滞っているとの事だった。こんな生まれながらに辛い宿命を持ってしまったからこそ俺含めてうちの一族はこのはとこにとりわけ優しくしていた。 「ほらよ」 「ありがとー」 俺は結婚もしてるし、給料もそれなりに貰っているから「開運招福」は自分で引き寄せていると思うことにした。「家内安全」だけは嫁が腐女子なせいで色々と困らされているがどうにかなっている。つまり、ご利益に頼る事は無いと言うことであった。 金閣寺が見えてきた事ではとこのテンションは最高潮になった。
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