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映画村 殿様気分で 練り歩く
金閣寺よりバスで10分、映画村に到着した。敷地内に入って早々にはとこはとんでもない事を言い出した。
「お殿様の服着たい」
あれ結構高いんじゃなかったか。まぁこう言う旅だしまあ良いかとあっさりと了承。
「お兄様もどうでしょうか」
商売の上手いスタッフだな。将軍様の警護の侍のコスプレを頼む。
仮装して映画村内を練り歩く。正直、将軍警護の侍と言うよりは将軍を誘拐している野伏せりにしか見えないのは気のせいだろうか。とりあえずこれを着てる間だけは殿気分を味わって貰おう。
練り歩いていると時代劇のロケなのか同じ様な格好をした人とすれ違う。それに妙に写真撮影をお願いされる。女子の修学旅行生に頼まれ満面の笑みで撮影に応じる姿はバカ殿そのもの。その笑顔を見ているだけで連れてきて良かったと心から思うのだった。
練り歩きも時間制限が近づいてきたところで吉原遊廓のエリアに辿り着いた。
「ねぇ、赤い檻の中に綺麗な女の人がいるよ」
「殿にはまだ早う御座います」
現実の殿はこのぐらいの歳には大奥でやりたい放題だったらしい。羨ましいやらけしからんやら。しかしこのエリアに子供連れで入れる様にするとは。ああいったコンテンツを子供に与えたくない親の気持ちが少しだけ理解出来た。それにしても俺も「殿」呼びする所ノリが良いものだ。
更にその道中、みたらし団子の売店の前を通りかかる。
「あれ食べたい」
「殿、お召し物が汚れます」
実際にタレがついただけでクリーニング代相当取られるんだろうな。結局着替え終わった後で食べには行った。どうでもいい話だが、俺が修学旅行でここに来たときは「買い食い禁止」のルールがあったのに破ったのを女子に密告(チク)られて、ホテルの廊下で正座させられた。
「毒味」
「おいおい、まだこのお遊びやるつもりか」
「いいから」
俺はみたらし団子の一番上だけを食べた。ああ、前に食べたのと同じ味だ。俺は懐かしさで軽く涙を流した。
「食べると泣く毒でも入ってたの? 後は僕が全部食べてあげるね」
何でこうなる。
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