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本能寺 場所違うけど 本能寺
日も暮れてきたので宿を取ることにした。ビジネスホテルと言うのも味気が無いのでどうせならと思い修学旅行客御用達の本能寺のホテルに決めた。修学旅行客しか受け入れてないかと思いきや二人旅でも泊まれるとの事だった。
二人部屋のテーブルの上には生八ツ橋が置かれていた。この点も前に来た時と変わらなかった。このホテルは時空が止まってるのでは無いだろうか。
「コンビニでお菓子買ってくるからちょっと待ってろよ」
はとこを一人部屋に残した。そして部屋に帰ってくると信じられない光景が広がっていた。テーブルの上に生八ツ橋のビニールが大量に散乱しているのだ。二人部屋と言うことでそう量は多くなかったが7~8個はあったのに。こいつ、全部食べやがった。
「生八ツ橋美味しいねぇ」
「馬鹿野郎! 俺の分は?」
「別にいいじゃん」
俺はキレた。本当の話、修学旅行以来ずっと生八ツ橋を食べてなかったのだ。それを無残に食べ散らかしたはとこを許すことが出来なかった。嫁とかがやったなら諦めの境地になるだけで済むのだが、弟みたいな立場のはとこがやったのならもう容赦はするものか。
はとこを押し倒して電気あんまを食らわせてやった。今日日の子供はこんな遊びはやらないのか初めて来る刺激に痛いのか気持ちいのかよく分からなく苦悶かつ恍惚の表情を見せるのだった。
その時、仲居さんが夕食を運んできた。俺は慌てて電気あんまを解除した。
「ご夕食をお運び致しました。あの、お連れ様は大丈夫でしょうか」
倒れてぐったりとしているはとこを見ての一言だった。
「ははは、二条城、金閣寺、映画村って行ったんで疲れてるんですよ」
上手く誤魔化した。
「左様でございますか。大浴場の方が24時まで空いておりますのでのんびり湯に浸かって疲れをお取り下さい」
「すいません、お疲れ様です。ついでに悪いんですけど生八ツ橋追加して貰っていいですか? あまりに美味しくてすぐに全部食べちゃったんですよ」
「分かりました、食後にお持ちする形で宜しいでしょうか」
さすが長年修学旅行客を相手にしてる仲居さん。この辺りの気遣いは分かってらっしゃる。
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