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視点は移動し、スクリーンには夕陽の沈む山が映し出される。真っ赤に染め上げられた空は、穏やかな空気に包まれているかのようだった。
何か懐かしい感覚が蘇ってくる。平穏な日常、かけがえのない平和……そんな言葉が頭を過ぎった。
「平和だな」
俺の心情とシンクロするかのような男の言葉。
「ホント平和になったよね。先月まで、わたしたちは脅えて暮らさなければならなかったのに」
「魔王の存在はそれだけ脅威だったからな」
「けど、勇者さまが倒してくれたわ」
「そうだな。穏やかに暮らせるのも勇者さまのおかげかもしれない。やはり神は我ら民を見捨てなかったんだ」
勇者? 魔王? 異世界ファンタジー系の映画なのだろうか?
「ね? &%$。勇者さまってどんな人なんだろうね?」
またしても名前だけが聞き取れない。たぶん男の名を呼んでいるはずなのだが。
「想像もつかないな。今、王都にいるらしいが、噂だけで本人を見ることもできなかったよ」
「やっぱり王都は勇者さまの噂で持ちきりなの?」
「ああ、リシャナ王はかなりの褒美を勇者に与えるらしい。領地の一つや二つ渡してもおかしくないくらいの活躍だったからな」
「だったら、勇者さまにこの土地の領主になってくれないかしら」
「なんでだ? ベッケン公はわりと民のことを考えてくれるぞ」
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