糸職人の語り

2/2
前へ
/6ページ
次へ
この白い糸を切って 黄色い糸は残します。 黒い糸は長めにして距離を取りますが、 やがて切ることになるかもしれません。 青い糸はだいぶささくれて 時期に切れてしまいそう。 ボロボロになるまで気が付かずにごめんなさいね、と わたしは糸を紡ぎます。 そうこうしていたら また新しい糸が空から垂れてきたのでよく見ますと、 それは先日わたしがとても欲しがっていた糸でした。 取捨選択は非常に心と頭を悩ませますが この糸を時々整理しておかないと  ご主人はがんじがらめになって 身動きがとれなくなります。 懸命に糸を紡ぎ直すより 断ち切る勇気を持った方が 幸せになれることもあるのです。 そのぶん、心を込めて 他の糸のお手入れをすることができるのです。 あなたのその糸は 本当に汗水垂らしてまで 紡ぐ意味があります? 心と身体を疲弊させても 繋がりたい理由はなんですか?
/6ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加