0人が本棚に入れています
本棚に追加
「夜に沈む」
今夜は君の声を聞けるだろうか
君からの電話がくるか、こないか、と
そんなことを気にしながら
夜を過ごすようになった
届かないと知っているのに
手をのばし合い
分かっているのに
分からないふりをしている
二人は心の熱の本当の意味を
違った分野の話題にすり替えて語り合う
そう、それは例えば音楽
夜明けを恐れず 夢中になって時間を過ごす
けれど、互いに届けたいのは
音楽への情熱だけではない
昼間の明るく正義に溢れた白い世界では
自分らしさを失うだろう
予定通りの言葉と調和のとれた笑顔を作り
私たちは何の予感も孕まない二人なのだと
誰でもない誰かに主張する
そして夜になれば
好きな音楽について思いを語る
その端々に君への気持ちをちょっぴり重ね合わせて
言葉にのせるのだ
二人は夜に沈む
よく耳を澄まさなければ
言葉を聞き逃してしまいそうな声に
私は今日も懸命に耳を傾ける
君の小さな声は
私の部屋の雑多な生活音にすぐにかき消されてしまうから
夜更けの会話がちょうどいい
そんなふうに理由をつけて
答えは夜に隠したままで
最初のコメントを投稿しよう!