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感情複製
ずっと考えていた。毎日楽しそうに過ごしているあの人たちの感情を味わえたら、地味な私の人生も少しは楽しくなるだろうか。他人の感情を読み取れる装置でもあれば。
こんな願いが実現するなんて思ってもみなかった。
それは、ある日の学校の帰り道。さびれた商店街の道端で、風呂敷を敷き、小物を販売している男がいた。黒マントにフードという、いかにも怪しい格好だったので、素通りしようとした。
「そこの君。」
男の目の前を通り過ぎた直後、声をかけられた。他に通行人はいない。私に言っているのは明らかだった。
一応振り返ってみると、
「これを君にあげよう。」
と言って、飴の缶を渡してきた。
とっさのことで思わず受け取ってしまったが、すぐに返そうと思った。しかし、男はすでに風呂敷をたたみ、その場を去ろうとしていた。
「説明書は缶の中に入ってるから。」
最後にそれだけ言って、足早に行ってしまった。
説明書
これは人の感情を読み取り、複製する装置である。複製した感情は、飴玉として生成する。飴玉を口に含んでいる間のみ、複製した感情を味わうことができる。……
そのあとは、具体的な操作方法と注意点が書かれていた。いたずらにしては、やけに手間のかけたものだ。
決して信じるわけではないが、これほど私の願いが反映されたものとなると、使いたくなってしまう。明日、少し試してみようかな。
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