Happy Birthday ~ My sweet honey

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涙が滲んできて急いで手の甲で目を擦る。 ふと横の棚を見ると そこにラッピングされた 小さな箱が置いてあり メッセージカードが差し込まれている。 カードを抜いて ラッピングを剥がし 箱を開けると キャメル色の革の手帳が姿を現した。 これ。。貰った財布と同じ。。 高嶺さんのお友達のお店で作られている物だ。 隅に銀杏の型が押してある。 急いでカードを開くと 達筆な文字が書かれていた。 【楓。誕生日おめでとう。 新たなスタートを祝して この手帳と靴を贈ります。 あなたの頼りになる相棒となる事を願って。 高嶺】 ポツンとカードに涙の雫が落ち 綺麗な字が滲む。 高嶺さん。 ありがとう。 嬉しいです。 刑事を続けられるのも。。高嶺さんのおかげです。 本当は。 本当はそのまま辞めて欲しかったんじゃないのかな。 高嶺さんはいつも心配してくれていて 危険な仕事をして欲しくないのもわかってる。 なのに。 こうやって仕事で使う物を選んで贈ってくれた。 俺の気持ちを尊重してくれて。 俺を認めてくれて。 思い遣ってくれて。 もう涙が止まらない。 カードと手帳を抱きしめ その場に立ち尽くし ただただ泣いた。 ピロン。と携帯が鳴る。 涙を必死に拭いて携帯を出すと 高嶺さんからLINEが入っていた。 お礼を言わなくちゃ。 アプリを立ち上げると 【楓。遅刻しますよ。】 え。 思わずキョロキョロと辺りを見回す。 でももちろん高嶺さんはいない。 携帯に目線を戻し クスッと笑みがこぼれる。 なんでもわかってるんだな。 俺がプレゼントを見て きっと泣いてるだろうって。 いつも家を出る時間から考えてこのタイミングで。 高嶺さんはすごい。 やっぱり来生高嶺は完璧だ。 【高嶺さん。ありがとうございます。 お礼はまた会えた時にちゃんと言いますね。 行ってきます。】 急いで箱とカードを鞄にしまい 古い手帳も鞄にしまうと 誰もいないのにキョロキョロとまた辺りを見回し 貰った手帳にちゅっとキスをして胸ポケットに入れる。 ピカピカの靴を履き 楓はほっと大きく息を吐き出すと 飛び立つように 家を出た。
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