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全てを食べ終わると元はまた携帯を出した。
「さて。どうしましょうか。
さすがに泊る所なんとかしないと。
まあ。俺は景と一緒なら車で野宿でもいいですけどね。」
「この真冬にそんな事したら凍死するわ。」
俺が睨みつけると 元はまたククっと笑う。
でも本当に笑い事じゃない。
どうしよう。
元はせっかくここまで来たのだから。と言うが
もう諦めて帰った方がいいんじゃないのかな。。
元が携帯で宿を探していると ピコンと音がした。
ん。と携帯を覗き込み 固まる。
「どうした?」
携帯を見つめたまま固まっている元に聞くと
元は急にゲラゲラと笑い出した。
笑いながら俺に携帯を渡す。
なんだ。
携帯を見ると高嶺からLINEが入っていた。
【宿はやってなかっただろう。
その宿から車で10分の清流館という宿を
お前の名前で予約してある。
貸しは後で回収する。楽しめ。じゃあな。】
あの野郎。。
景品の宿がやってない事。知ってたな。
なんで期限が年内なのか
きっと不思議に思ったに違いない。
そういう疑問をそのままにしないのが高嶺だ。
調べて23日で営業が終わる事を知り
事前に他の宿を予約していてくれたらしい。
「ここまで言わないのが高嶺らしい。
よっぽどこの忙しい時期に留守にする事を
不満に思ってたんだな。」
元はそう言ってまたゲラゲラと笑い出した。
そうだよな。
それでも他の宿を予約しておいてくれるのが高嶺だ。
意地悪はするけど 最後はきちんと押さえる。
元への誕生日プレゼントのつもりなんだろう。
そして俺の顔を潰さないように。
俺を想ってやってくれてる。
その気持ちもひしひしと伝わった。
元は立ち上がり サングラスをかけると財布を出す。
「じゃあせっかくの高嶺の好意ですから。
景の浴衣姿。堪能させてもらいますか。」
「俺 ジャージ持ってきたぞ。」
「ええ? せっかくだから浴衣着てください。」
縋るように俺にすり寄り要求する元を無視して
店を出て 車へと向かう。
高嶺。ありがとう。
俺は心の中でそう礼を言った。
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