始まり

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そろそろと目を開けると大きな人が どーんと目の前に立っていた。 その身体つきだけではない迫力あるオーラに わぁ。すごい。。思わずぽかんと口が開く。 金子は手を取られ捻りあげられていて 必死にその人の手をタップしていた。 「・・か・・勘弁してくれ・・。」 その人は面倒くさそうに ボンっとその腕を 放り投げすっとその場にいたチンピラ二人に 一瞥をくれる。 「ヤベエ。高嶺だ。。」 兄貴分がそう呟き 急いで金子を抱え 走って逃げていく。 楓はその場にペタンと座り込み  ホッと安堵の息をついた。 高嶺と呼ばれたその人は俺を見もせず 座っていたらしいカウンターへと戻っていく。 この人に見覚えがあった。 もう刑事を辞めた真壁先輩の喫茶店で 坂田先輩と事件の調査結果を報告に行ったとき カウンターに座っていた人だと思う。 真壁先輩のお友達なのかな。。 だったらちゃんとお礼を言わないと・・ 楓は立ち上がり パンパンと埃を払うと カウンターに座り酒を飲む 高嶺の後ろまでそろそろといき  さてどうしようと佇んだ。 ・・何て声かけよう。。 ああ。俺の事覚えてないかもしれない。。 ・・でも・・覚えてたら失礼だし。 そうだ。真壁先輩の名前を出せば。。 うーん。それでいいかな。。 でもいきなり言っても。。。 立ち尽くし逡巡していると マスターに目配せをされたのか 煙草を吸っていた高嶺がふっとこちらを向いた。 ああ。今がチャンスだ。。きっと。 「あの。。ありがとうございました。 助けていただいて。。」 急いで頭を下げる。 このまま話を続けなければその先 何も言えなくなってしまう。。 「真壁先輩の店にいらした方ですよね?」 俺の言葉に高嶺は眉をひそめ じっと俺の顔を見つめていたが ああ。と興味無さそうにコクリと頷く。 良かった。俺の事覚えていてくれたのかも。 そうだ。真壁先輩のお友達なら 今 どういう情報があるのか 聞いてもらったほうがいいのかもしれない。  この間坂田先輩と報告に行ったときに居て 話を聞いていたのだがら きっとこの件に関わっている人だ。 普段 張り込みや尾行が多く  なかなか真壁先輩の店にも行けない。 今 話しておけば早く真壁先輩に情報が渡せる。 まだ確証は無いが少し薬の情報を持っていた。 「あの。。坂田先輩に言われて 聞き込みをしていて。 それであの。。」と話し始めたら 顔をしかめた高嶺に右手だけで制された。 急いで口を閉ざす。
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