Happy Birthday ~ My brother

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「おお。高嶺。二日間悪かったな。 旅館助かったよ。景も喜んでた。」 「そうか。それは良かった。」 相変わらずあっさりとした返答だ。 大した事ではない。とでも思ってるんだろう。 旅館の食事もわざわざ特別料理を頼んでおいてくれ 乾杯用にシャンパンも。 高嶺のやる事に一切抜かりはない。 あの界隈では一番の旅館だったらしく サービスも部屋も料理も最高だった。 会計も全て事前に済ましてあり 景は最初かなり恐縮して いやいやいやいやと 焦りまくっていたが 「高嶺の気遣いですから。楽しみましょう。」と 言ってなんとか納得させると 高嶺に礼言わなくちゃな。。と言って 嬉しそうにしていた。 忘れられない誕生日になった。 兄弟の思いやりに心から感謝し ふと それで。。と疑問を口にした。 「お前。まだ着かないのか。 今日のスケジュール 事務所で仕事じゃなかったか。」 基本 スケジュール管理は高嶺に全て任せている。 朝から事務所で仕事とLINEが入っていた筈だが。。 「ああ。そうだ。事務処理が溜まってる。」 高嶺はそう言って 言葉を切る。 神田が両手で抱えきれないくらいの 書類をどかっと俺の目の前に置いた。 その量にあんぐりと口が開く。 高嶺の声が携帯から聞こえてきて その後ろからは何故か波音がしていた。 「社長。俺は今日休みを頂きます。 今日のスケジュールは目の前の書類を 片付けるだけだ。終わったら帰っていい。 まぁ。軽く夜中まではかかるだろうが。」 「た・・高嶺! どういう事だ!」 高嶺は明らかに煙草の煙を吐き出した音を立て 「プライベートの内容を上司に話す必要はない筈だが。」 「ちょっと待て! 仕返しのつもりか。 俺は誕生日だったんだぞ!」 高嶺はクッと笑う。 「ああ。楽しかっただろう。 だが 従業員からすればただの平日だ。 サボった分 身を粉にして働け。じゃあな。」 「高嶺!」 怒声は空を切り ガチャっと電話が切られた音が 耳に寂しく残る。 神田はすまなそうに眉をひそめ 「元兄貴。手伝います。パソコン出来ますから。」 俺はその言葉を虚しく聞きながら 深いため息をつき 天を仰いだ。 随分早く貸しを回収されたものだ。 全く。 あの野郎には敵わない。
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