楓 Cooking

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「にんじんにはβカロテンが沢山含まれていて 体内でビタミンAに変わって 免疫力アップに効果があるんです。 高嶺さん。忙しくて疲れ溜まってますよね。 だから。頑張って食べて下さい。」 何度そう言っても高嶺さんは首を振り いつもソッポを向いてしまう。 この間なんて 「βカロテンは小松菜やかぼちゃでも取れます。 それをたくさん食べればいいでしょう。」って 言い切られた。 呆れてポカンと口が開く。 なんでこう子供みたいになってしまうんだろう。 いやいやと首を振る高嶺さんは クールでカッコいい柏木組幹部の来生高嶺じゃない。 ぷいっと不貞腐れる小学生の高嶺坊ちゃんだった。 それでも何とかしなくっちゃ。 嫌いだからといって食べないのは駄目。 基本 好き嫌いは克服出来ると思っていて 料理の仕方で 絶対に食べさせられると信じている。 久々の研究者魂に火がついて にんじん大作戦を決行する事にした。 相変わらずお弁当のにんじんは食べて貰えない中 やっと仕事も落ち着きを見せていたらしい 12月の始め 高嶺さんから 【今日は8時に帰ります。楓の飯が食いたい。】 とLINEが入った。 嬉しかった。 一緒にご飯を食べれるのは1ヶ月ぶりだ。 何にしようかな。。 署で坂田先輩の報告書の代筆をしながら 頭の中ではレシピを考え始める。 坂田先輩の字はお世辞にも綺麗とは言えなくて 報告書を書いても いつも岩城さんから 大目玉を喰らっていた。 一度代筆を願い出ると味を占めて それからは毎回のように代筆をするようになった。 坂田先輩の字を読める人も他にいなかったし。。 すらすらと鉛筆を動かしながら 脳内で 何にしよう。。と考えていると 坂田先輩が近づいてきた。 「矢野。出来たか。」 コクンと頷いて 「カレーです。」 脳内の思考に引っ張られ思わずそう答える。 「カレー? なんだ。腹減ったのか。 代筆の礼に 昼飯奢ってやるぞ。」 坂田先輩はきょとんと俺を見つめ そう言った。
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