楓 Cooking

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ドアを開けるとスパイスのいい香りが漂ってきた。 今日はカレーか。 俺は食い物にはあまり興味が無かったが ガキの頃から カレーは好きで よく食べる。 いつもより 香ばしい匂いだな。 靴を脱ぎ リビングへと向かう。 久しぶりにこの時間に帰ってこれた。 それにしてもキツかった。 現在過去未来の業務が 降りかかり その間にも細かい問題は起き 対処に追われ ブツブツ文句を言い続ける元を宥め 脅し 働かせて なんとか先が見えてきた。 楓が昼用に弁当を届けてくれたおかげで この地獄を乗り切れたと思っている。 楓は本当に優しい。 自分も朝 忙しいだろうに早起きして弁当とスープを作る。 それも全て多めにだ。 必ず俺用の弁当箱以外にも サンドウィッチや握り おかずが入ったタッパーがあり 龍や佐々木に渡す時に 「三代目さんや皆さんでよかったら食べて下さい。 いつも取りに来てもらってすいません。。」 と 逆に謝るらしい。 あまりの忙しさに 文句が止まらない元の口に 楓のデカイ握りを放り込むと 口が塞がり静かになるし 美味い美味いと機嫌も良くなる。 楓の飯を他に喰わせるのは本当は嫌だが 実際 随分と助かった。 殺伐とした雰囲気が一気に和む。 仕事の手を止めない工夫など なかなか出来る事ではない。 「ただいま。」 声をかけると楓がキッチンから飛び出してきた。 「おかえりなさい。」 そのまま体当たりするように抱きついてくる。 珍しい積極性に少し驚く。 まあ。こうやってまともに顔を見るのも久しぶりだ。 ぎゅっと抱きしめ 念願の柔らかい身体の感触を ゆっくり味わい さわさわと背中を撫でる。 腰のエプロンに手をかけ そのままベッドルームに 直行しようかと考える俺に 敏感に気づいた楓はふるふると首を振った。 「ダメです。先。ご飯。カレーですから。 あ。。ちょっといつもと違うんですけど。。 今日はドライカレーです。」 ドライカレーか。いいな。 カレーなら何でも好きだ。 さっきから匂いが刺激し 腹も減っている。 先に好物を食べて 後から大好物を頂こう。 「着替えてきます。」 そっと楓を離し ウォークインクローゼットへ向かう。 パタパタと楓は急いでキッチンへと戻っていった。
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