楓 Cooking

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サフランで炊いた米の上にドライカレーがかかり 香ばしいいい匂いをさせている。 旨そうだ。 「いただきます。」 二人で手を合わせそう言ってスプーンで掬って一口喰う。 ああ。 「旨い。」と言うと 楓は嬉しそうに笑顔になった。 それでいて探るような目で俺を見ている。 なんだ。 俺は不審に思い 「楓。何か隠してますか。」と聞く。 途端に楓は焦り出し 「な・・なんにも隠してないです。。 えと。。なんで。。なんでですか。」 もうその返事が何か企んでいる事を白状して いるようなものだ。 全く楓はわかりやすい。 嘘がつけないのだ。 胡麻化そうとしてもすぐにわかる。 楓が飯で何かを企むとしたらアレしかない。 ハラハラと俺を見つめている楓の前で スプーンでカレーを混ぜると 中から憎いあの赤い野菜が顔を出した。 ハート形にくり抜いてあり見た目可愛らしいが だからと言って俺は絶対に食べはしない。 俺はそれを掬い 楓の前にすっと差し出す。 「あーん。」 俺がそう言うと楓は諦めたようにため息をつき スプーンに乗ったにんじんをパクっと食べた。 紛れ込ませて食べさせようと思ったのか。 弁当のにんじんを全て佐々木と龍に食べさせていた 事を聞いていたのだろう。 俺の身体を心配してくれているのはわかる。 だが嫌なものは嫌だ。 最近はこの攻防戦が楽しくなっている。 楓もあの手この手を使ってくるが 今の所不意打ちの一回を除いて全戦全勝だ。 もう。。と膨れながら楓は自分のカレーを食べ始める。 今回も俺の勝ちだな。 他には入っていない事を確認し 安心してあっという間に平らげる。 旨かった。 たまにはドライカレーもいい。 久しぶりの楓の手料理に満足し 俺は椅子の背もたれに 身を預け足を放り投げた。 「旨かった。ご馳走様。」 楓は嬉しそうに頷くと 空の皿を持って キッチンへと入っていく。 シンクに汚れた皿を置き カウンター越しから 満足そうにリラックスしてビールを飲む高嶺を確認し くすっと笑みを浮かべ 気づかれないように 小さくガッツポーズした。
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