始まり

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高嶺はカウンターの止まり木を降り 氷のような視線を俺に向けた。 「矢野さん。。でしたか。 私達がご協力をお願いしているのは坂田刑事です。 ご報告頂けるなら 彼を通して頂きたい。 それにあなたにはお判りにならないかも知れないが こんな公共の場で極道と警察が 仲良しこよしを世間に晒して 何も問題が無いとでも?」 ごちそうさま。 高嶺はマスターにそう声をかけ 俺を残してその場をすっと後にした。 極道。。極道って。 あの人。。え。。じゃぁ。。柏木組の。。 三代目さんの。。ああ。そうか。。 でも全然見た目がそうじゃなくて。。。 ヤクザさんだなんて思わなくて。。 そうかと思い当たる。 刑事がこんなところでヤクザの人に 情報を漏らしているなんてバレたら 大変なことになる。 冷たい言葉だったがそれを止めてくれたんだ。。 なのに俺は何もわかってなくて。。 どんどん気持ちが下がっていく。 取り返しのつかない事をしてしまったのかも しれない。。 どうしよう。。真壁先輩に謝らないと。。 泣き出しそうな思いで下を向いていると マスターがそっと近づいて 「どうぞ。。」とコップを持たしてくれた。 気を落ち着かせてください・・という 意味なのだろう。 「すいません。。」 頭をぺこりと下げる。 色々な事がありすぎて喉がカラカラだった。 茶色い液体を一気に飲み干すと 熱い棒がぐっと腹に差し込まれ あっという間に心臓がバクバクと音を立てる。 ・・・あぁ・・これお酒だ。。。 楓は酒が一切飲めない。 目の前がぐるぐると回りだし 大丈夫ですか!!と声をかけてくれているであろう マスターの顔がどんどんぼやけていくのを 感じながら どーーんとその場に卒倒した。
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