始まり

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そのスナックの店員はすぐに売人と接触した。 そこでも泳がせ売人を尾行し毎日毎日歩き続ける。 楓の靴はあっという間に靴底が減り 一番金を使うものといえば仕事で使う靴だった。 その売人の居場所はすぐに抑えられた。 だがなかなかその元になる薬を手に入れる 取引現場に遭遇しない。 既に一週間が経過していた。 難しいな。。でもきっと必ず取引はある。 でなければ薬は手に入らないのだから。 妹が薬で亡くなり 薬自体は無くならないにしても それを広めようとしている奴らは絶対に許せない。 一人でも薬で命を落とす人を無くすんだ。。 冷たい雨の中 売人が入った飲み屋の前で ぶるぶると震えながら出てくるのを待つ。 するとポンっと頭を叩かれた。 どうしよう。。誰かに気付かれた。。。 尾行や張り込みは得意だと思っていたのに。。 そっと置かれた手の方を見上げると あの大きな人が傘を持って俺を見下ろしている。 え。。。。なんで。。。 「矢野さん。こんな所で何してるんですか。」 あ。。初めて名前を呼ばれる。 この間あんだけ怒らせたのに。。 嬉しくなり あの・・と話そうとして ああダメだと口に手をやる。 この間怒られたばかりなのにまた情報を・・ 高嶺は苦笑を浮かべ もういいです。と言い その場を去ろうと足を踏み出した。 が すぐに振り返り 「あの店は中国人がやっています。 色々と良くない噂がある店だから ただ立ってないできちんと調べれば もっと情報が出てくるはずだ。」 無駄な事を・・とでも言いたげな そのセリフに思わず すいません・・と頭を下げ あ・・でも・・・・それって・・・ 「あ・・ありがとうございます!」と 大きな声でお礼を言う。 高嶺は辺りを見回し また苦笑いを浮かべ そっと口に指を一本持っていき 言った。  「あんたバカですか。」
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