チャレンジ

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雨降りしきる夜の街を 黒塗りの高級車が 通り過ぎていく。 高嶺は煙草の煙を燻らせながら 携帯を耳にあて 窓の外へと視線を向けた。 「ああ。。。そうだ。必ず間に合わせろ。 金はいくらかかっても構わない。。ああ。 抜かりの無いようにな。。ああ。頼む。」 そう言って携帯を切ると 煙を吸い込み ふぅ。。と吐き出す。 灰皿へ煙草を押しつけて火を消し 腕を組んで 目を閉じた。 車はすーっと商業施設が入るビルの駐車場へと 入っていく。 一番奥の住人用専用エレベーターの前に 車は静かに停まり 龍が運転席から出て 助手席のドアを開けると 高嶺は外へと出た。 「明日はお前も休め。久しぶりだろう。」 そう声をかけると龍は嬉しそうに頷く。 ここの所 仕事が多忙を極め この時間に家に帰りつくのも久しぶりだ。 頭を深々と下げ 見送る龍へと頷いて エレベーターに入る。 最上階の自分の部屋まではノンストップだ。 エレベーターのドアが開き 廊下を歩き 重厚なドアの前で鍵を出す。 ドアを開けて中に入ると パタパタと足音が聞こえてきて ひょこっと楓が顔を出した。 「高嶺さん。お帰りなさい!」 久しぶりに見るその笑顔に癒される。 「ただいま。」 靴を脱ぎ リビングに入ると ダイニングテーブルの上に大きな 発泡スチロールの箱が置いてあった。 またか。。。。 思わず顔をしかめると 火を止めたのか 一旦キッチンに戻っていた 楓が出てきて かぶりを振る。 「司さんじゃないです。」 司じゃない。 ならば誰だ。 俺の不審気な様子に 楓は苦笑いを浮かべながら 発泡スチロールの箱のふたを開ける。 中にはぎっしり霜降りの牛肉が入っていた。
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